スチームクリーナーが使えない場所について、リフォーム設計のプロが建築材料の知識をフル活用!して解説します。
記事を書くにあたり、スチームクリーナーの使えない場所についてあれこれ調べましたが、スチームクリーナーメーカーと建築材料メーカーの見解が違うなど、情報がバラバラ。
しかも、あいまいな表現ばかり。
これでは、
と、わからなくなってしまう人が続出しそう。
たとえば、アイリスオーヤマのスチームクリーナーの取扱説明書には、スチームクリーナーが使えない場所として、
- 木製品
- 合成繊維
- プラスチック製品
があげられています。
こんな感じ
↓ ↓ ↓
木製品と合成繊維、プラスチック製品に使えないとなると、残る住宅建材は……
スチームクリーナーメーカーは、「スチームクリーナーを使ったら変形や変色してしまった」などのクレームを避けるべく、
- 少しでも危険性のあるものはNGとする
- 「材質によっては変形や変色の恐れがあります」と明記する
どちらかの対応をとっています。
そして、建築材料メーカーは、スチームクリーナーの使用に対して消極的。
実際にスチームクリーナーが使えるかどうかの試験をしているわけではないので、「この材料にはスチームクリーナーが使えます」とは言えないのです。
まとめると、
スチームクリーナーメーカー
いろいろなものに使えるけど、不具合が出る場合もあるから、自己責任で試しながら使ってね。
建築材料メーカー
通常の使用では100℃の蒸気がかかることはないので、スチームクリーナーの使用が大丈夫かどうかの試験をしていない。だから、できれば使わないでほしい。
では、スチームクリーナーは、本当に使えない場所ばかりなのか。
絶対にスチームクリーナーが使えない場所もありますが、注意をしながら使えば大丈夫な場所もたくさんありますよ。
この記事は、リフォーム設計のプロで建築材料に詳しい私が、スチームクリーナーの使えない場所についての情報を整理し、結論はどうなのかを解説。
この記事で、少しでも安心してスチームクリーナーが使えるようになれば嬉しいです。
私がスチームクリーナーを購入するにあたり、3ヵ月以上かけてめちゃくちゃ真剣に比較し、実際にどうだったのかについて記事を書きました。
満足度に直結する内容で比較しているので、スチームクリーナーを購入しようとしている人は、ぜひこの記事を読んでみてください。
イマイチな機種を買ってしまうと、「え?これ、地味にキツイんだけど」となってしまいかねません。
スチームクリーナー比較|ケルヒャー&アイリスオーヤマを超えた【最強の機種】
スチームクリーナーが使えない場所【私の結論】
スチームクリーナーが使えない場所について、最初に私の結論から書いてしまいます。
以下2つにわけてお話しますね。
- 絶対にスチームクリーナーが使えない場所
- 気をつけながらスチームクリーナーを使うべき場所
絶対にスチームクリーナーが使えない場所
まずは、絶対にスチームクリーナーが使えない場所から。
- ワックスがけされた床
- 皮製品
- 白木
- 素焼きのセラミック
- 紙クロス(一般的なビニルクロスは含みません)
- ベロア・ビロード・レーヨン
このあたりは材質的に水に弱いので、スチームクリーナーの使用はやめましょう。
1つずつ簡単に説明します。
ワックスがけされた床
ワックスがけされた床は、スチームクリーナーによる蒸気の熱でワックスが溶け、まだらになってしまいます。
出典:リンレイ
また、フロアマニキュアなどのコーティングをフローリングにしてある場合は、コーティング剤の材質によって、スチームクリーナー使用の可否が分かれます。
見えない部分で試して、様子を見ながら使ってください。
皮製品
皮製品は、どのスチームクリーナーメーカーの取扱説明書にも書いてあるくらい、スチームクリーナーには不向きな材質です。
出典:NOCE
高温のスチームは、さらにダメージ大です。
白木
基本的に吸水力の高いものは、蒸気を吸って膨張したりシミになったりしやすいので、スチームクリーナーには不向きです。
白木は吸水力が高いので、NG。
桐のタンスや、和室の柱、窓枠も白木なので、スチームクリーナーをかけるのは、やめましょう。
同じ理屈で考えると、表面にコーティングがされていない白木やオイル仕上のフローリングも、スチームクリーナーはダメそうですが、これはなんとも言えないんですよね。
出典:マルホン
フローリングに使われる樹種には油分を多く含んていたり、硬い材質だったりで、吸水性が低いものもあります。
この場合、スチームクリーナーを使っても大丈夫なケースも。
これも、目立たない部分で試して、様子を見ながら使ってみるしかありません。
素焼きのセラミック
素焼きのセラミックも、白木と同じ吸水性が高いという理由で、スチームクリーナーが使えません。
紙クロス(一般的なビニルクロスは含みません)
壁紙でおもなものは以下4種類
- ビニルクロス
- 紙クロス
- 布クロス
- 珪藻土クロスなどの特殊クロス
世の中で使われている壁紙は、ビニルクロスが9割以上です。
出典:サンゲツ
ビニルクロスは「壁紙」と呼ばれますが、その材質はポリ塩化ビニール樹脂。
ビニール系素材です。
その裏(のりを貼る側)に、裏紙が貼ってあります。
ですので、ビニルクロスの壁は、絶対にスチームクリーナーが使えない場所にはあたりません。
スチームクリーナーが使えない壁紙は、ビニルクロス以外の
- 紙クロス
- 布クロス
- 珪藻土クロスなどの特殊クロス
これらの壁紙を使っている場合は、蒸気を壁紙が吸ってしまうので、スチームクリーナーはNGです。
ベロア・ビロード・レーヨン
ベロアやビロード、レーヨンなどの、光沢感がある布製品も、そもそも水に弱いので、スチームクリーナーを使うのはやめましょう。
出典:ユザワヤ
カーテンやクッションカバーなどに使われています。
気をつけながらスチームクリーナーを使うべき場所
次は、気をつけながらスチームクリーナーを使うべき場所について説明します。
基本的に、スチームクリーナーは、すべての場所で変色や変形、痛みを疑いながら使用するのがベター。
スチームファーストの説明書にも、こう書いてあります。
初めての場所にスチームをかけるときは、取扱説明書で材質の確認をしてから行ってください。
材質がわからない場合は、ご使用前に目立たない場所で試してからご使用ください。
ケルヒャーの取扱説明書にも似たようなことが書かれています。
それでは、特に気を付けながらスチームクリーナーを使ってほしい場所をピックアップしてみましょう。
- フローリング
- ガラス・鏡
- 合成樹脂(プラスチック)
- 便器
1つずつ簡単に説明します。
フローリング
フローリングはスチームクリーナーを使うと、
- 膨張したり
- 反ったり
- ツヤをなくしたり
するものがあります。
特に、無垢フローリングは寸法安定性が低いので、スチームクリーナーによって不具合がおきるケースも。
出典:朝日ウッドテック
ただ、樹種によってはスチームクリーナーを使ってもまったく問題ないことが多々あるので、目立たないところで試すか、メーカーから小さなフローリングサンプルをもらって試すなどしましょう。
挽き板フローリング、突き板フローリング、シートフローリングは、銘木の下に合板が張り付けてあります。
出典:朝日ウッドテック
合板は薄い単板が接着剤で積層されたもので、湿気のあるところで長時間使うと、接着剤が落ち、単板がはがれだします。
これを肌分かれといいますが、こうなると強度が著しく落ち、ボソボソにささくれ立ってしまったり、踏んだ感触がフカフカしたりします。
この合板の肌分かれがしやすいのは、湿気のある場所。
合板は湿気に弱いので、スチームクリーナーで頻繁に蒸気をあてるのはあまりよくないと、私は考えています。
とはいえ、フローリングの床もスチームクリーナーで掃除をすると、とても快適になるので、私は以下のやり方で掃除をしています。
- 月に1度だけ
- 何往復もせず、サッと通り過ぎる程度に拭く
- 洗剤は使わない
カーペットやフロアシートを掃除するときは、洗剤を床にスプレーしてからスチームクリーナーを使いますが、フローリングの場合はタンク内に入れた洗剤のみで掃除しています。
我が家のフローリングを掃除したときの画像はこんな感じ。
BEFORE↓
AFTER↓
ツヤッツヤのピカピカになりますよ!
ガラス・鏡
ガラスや鏡は、同じ場所にスチームをあて続けると、割れます。
サッと拭く程度にしましょう。
それと、とても寒い日に窓の掃除をすると、冷え切ったガラスに100℃の蒸気があたることになり、温度差で割れる可能性大です。
合成樹脂(プラスチック)
この合成樹脂がくせ者です。
合成樹脂とひとことで言っても、100℃以上に耐えられる熱に強いものから、60℃くらいしか耐えられない熱に弱いものまでさまざま。
そして、浴槽やキッチンカウンターなどに使われている「人造大理石」も、石ではなく合成樹脂製品です。
合成樹脂製品は、メーカーや使われる場所によって、さまざまな樹脂が使われているので、ひとくくりにして、スチームクリーナーを使っていいか悪いかを決めることはできません。
代表的なものについて、少しお話しますね。
キッチンに使われている合成樹脂
人造大理石のキッチンカウンターをはじめ、キッチンには合成樹脂材料がたくさん使われています。
出典:TOTOクラッソ
基本的にキッチンカウンターやシンクなどは、熱湯をこぼす可能性がある場所なので、スチームクリーナーを使っても大丈夫。
キッチンメーカーのカタログを見ても、人造大理石キッチンカウンターやシンクの耐熱温度は、かなりの高温になっています。
ユニットバスに使われている合成樹脂
ユニットバスにもたくさん合成樹脂が使われています。
床、浴槽、天井、出入口の扉など。
まず床ですが、各メーカーによって使っている材料が違います。
次に浴槽。
パナソニックのユニットバス「オフローラ」では、人造大理石とFRPの浴槽がありますが、カタログにこんな明記があります。
80℃以上のお湯が浴槽表面に直接当たるような使い方は性能の劣化を早めるおそれがあります。
浴槽表面に80℃以上のお湯が直接当たらないよう、浴槽にお湯がたまった状態で使用するなど、ご注意ください。
浴槽に直接スチームをあてるのはやめておいたほうが良さそう。
次は天井ですが、これも通常の使い方で100℃の熱がかかる場所ではないので、100℃のスチームを直接当てるのはやめたほうが無難。
そもそも、天井に向かって蒸気を直接噴射するのは、危険です。
ちなみに壁は鋼板でできているユニットバスが多いので、鋼板ならスチームを当てても大丈夫です。
最後に出入口の扉。
ユニットバスの出入口扉には、ガラスが使われている場合もありますが、樹脂(ポリスチレン)が使われていることが多いです。
このポリスチレンの耐熱温度は70~90℃。
やっぱり、100℃の蒸気を直接あてるのはまずそう。
樹脂部分と本体部分の堺にあるパッキンのカビを取るために、しつこくピンポイントでスチームクリーナーを使い続けると……変形する可能性があります!
ユニットバスにスチームクリーナーを使う場合は、直接蒸気をあてるのではなく、パッドやスポンジなどをつけて使うようにしましょう。
便器
便器もスチームクリーナーを使うなら、気をつけながら使ってほしい場所です。
と、いうより、便器メーカーによっては、スチームクリーナーを使わない方がいい場合も。
スチームクリーナーを使わない方がいい便器は以下3つ。
- パナソニックのアラウーノ便器
- リクシルの便器でアクアセラミック、プロガード加工がしてあるもの
- すべての便器の便座
まず、パナソニックのアラウーノは陶器ではなく樹脂でできています。
出典:パナソニック アラウーノ
熱に強い樹脂を便器に使っているとも思えないので、スチームクリーナーの使用はやめましょう。
次に、リクシルの便器で、アクアセラミック、プロガード加工がしてあるもの。
出典:リクシル サティス
これは、陶器の便器にコーティングがしてあるため、掃除洗剤やブラシなども、かなりマイルドなものを使うよう説明書きがあります。
ですので、スチームクリーナーで高温の蒸気をかけながら、ナイロンブラシでゴシゴシするのは、ちょっとまずいです。
最後に、すべての便器の便座ですが、便座は樹脂でできているため、100℃のスチームをあてるのは危険です。
スチームクリーナーが使えない場所【取扱説明書】
スチームクリーナーが使えない場所について、次は、スチームクリーナーメーカーの取扱説明書を見てみましょう。
今回確認したのは、以下3つのメーカー。
- スチームファースト
- ケルヒャー
- アイリスオーヤマ
1つずつ説明します。
スチームファースト
スチームファーストの説明書には、先に紹介したとおり、以下のように書かれています。
初めての場所にスチームをかけるときは、取扱説明書で材質の確認をしてから行ってください。
材質がわからない場合は、ご使用前に目立たない場所で試してからご使用ください。
フロアコーティング加工のない床や素焼きのセラミックでのご使用はできません。
変形、表面の破損、あるいはワックスがけされた床の表面の光沢がなくなる恐れがあります。
こまかく、あれがダメ、これがダメという書き方ではなく、「自分で試しながら使ってね」という感じです。
ケルヒャー
ケルヒャーもスチームファースト同様、「自分で試しながら使ってね」タイプの取扱説明書。
洗浄前に材質を確認し、テスト洗浄を行ってください。
洗浄部分の材質によっては、変色・変形など洗浄物を傷める恐れがあります。
1か所に留めてスチームを当てないでください。
変色・変形など洗浄物を傷める恐れがあります。
アイリスオーヤマ
アイリスオーヤマの取扱説明書は、「次のものには使用しないでください」として、かなりたくさんのものが明記されています。
冒頭にお見せした画像ですが、もう一度張っておきます↓
出典:アイリスオーヤマ
ここに書かれているものすべてを除くと、先にお話したように、金属製品の一部にしかスチームクリーナーを使えないことになりそう。
「合成繊維」とざっくり書かれているけど、ナイロンのカーペットはダメ?
アクリル製のファブリックを使ったデスクチェアには、スチームクリーナーが使えないの?
そんなふうに思う人もいるかもしれません。
だけど、我が家のカーペットはナイロン製ですが、普通にスチームクリーナーを使えていますし、不具合も起きていません。
アクリル製のファブリックを使ったデスクチェアも、スチームクリーナーで掃除したけれど、問題なくとてもきれいになりました。
ですので、「使えないもの」として明記されているものでも、全部が全部スチームクリーナーが使えないというわけではないのです。
自己責任にはなりますが、見えない部分で試したり、様子をみながら使っていけばいいのです。
スチームクリーナーが使えない場所【材料メーカー】
次は、材料メーカー側がスチームクリーナーに対して、どのように考えているかを紹介します。
- パナソニック×フローリング
- 東リ×ビニル系の床材
1つずつ紹介します。
パナソニック×フローリング
「床材のお手入れで、スチームモップやスチーム掃除機を使ってもいいですか」
という質問に対する、パナソニックの回答がこちら。
床材は、主材料として木材を使用し、表面については塗装仕上げを施しています。
スチームモップやスチーム掃除機を使用すると、膨れやシミ等が発生する恐れがありますので、ご使用はお避けください。
出典:パナソニックQ&A
これに対する、私の意見としては、「まぁ、メーカーはそう言うよね」です。
先にお話した通り、通常の使い方ではありえない条件=100℃の蒸気がかかることに対して、メーカーは試験をしません。
そして、試験をしていないものに対して、OKですとは言わないのです。
私は本業のリフォーム設計でメーカーに問い合わせをすることがよくありますが、メーカーは基本的に「超無難で、絶対安全な回答」しかしません。
OKと言ってしまって不具合が出たら、責任を取らなければならないから。
ですので、メーカーの超安全回答を真に受けると、できることが極端に少なくなってしまうのです。
東リ×ビニル系の床材
「ビニル系の床材にスチームクリーナーは使えますか」
という質問にたいする、東リの回答がこちら。
スチームクリーナーの熱が瞬間的にあたる程度でしたら、さほど影響はないのですが、50℃程度の温熱が長時間あたりますと、変色や変形のおそれがありスチーム洗浄を積極的にお薦めするものではありません。
これを翻訳すると、「多分大丈夫だと思うけど、責任はとれないよ」ですね(笑)
やっぱりビニールなので、1か所に熱を与え続ければ、変色や変形するのは、考えてみれば当然。
自分でスチームのあて方を考えながら、使うしかないのです。
スチームクリーナーが使えない場所【まとめ】
スチームクリーナーが使えない場所について、リフォーム設計のプロとしての意見を入れながらお話してきました。
建築材料メーカーがおすすめするマイルドなお掃除用具と洗剤で汚れが落ちればいいですが、落ちないからスチームクリーナーにたどり着いた人がほとんどだと思います。
- どんどん汚れていくのを見過ごす
- 多少のリスクがあっても、スチームクリーナーで掃除する
このどちらかを選ばなければならないのです。
スチームクリーナーの取扱説明書や、建築材料メーカーの注意書き通りに使おうとすると、スチームクリーナーの魅力を生かし切ることができません。
スチームファーストやケルヒャーの説明書にあるように、
- リスクを知りつつ、
- 材質を調べたり、
- 見えないところで試しながら、
使っていくのがベストだと思います。
このブログ、スチームマニアでも、たくさんの情報を発信していきます。
快適なスチーム生活を送りましょう(^-^)
スチームクリーナーを購入しようとしている人はちょっとだけ待ってください!
私がスチームクリーナーを購入するにあたり、3ヵ月以上かけて徹底的にに比較し、実際に使ってみてどうだったのかを書いた記事があります。
この記事を読んでから、購入しても遅くはないかもしれませんよ。
スチームクリーナー比較|ケルヒャー&アイリスオーヤマを超えた【最強の機種】
満足度に直結する内容で比較しているので、うっかり致命的な欠陥があるスチームクリーナーを買ってしまうことを避けられます。